GLOSSARY / 金属組織・強化
ステンレス鋼
Stainless Steel鉄にクロムを11%以上添加した合金の総称。クロムが表面に不動態膜を形成することで耐食性を持つ。ゴルフクラブには複数のグレードが使われており、性質は大きく異なる。
ステンレス鋼とは、鉄(Fe)にクロム(Cr)を11%以上添加した合金の総称です。「ステンレス(stainless)」とは「錆びにくい(stain-less)」という意味ですが、完全に錆びないわけではありません。クロムが大気中の酸素と反応してフェース表面に薄い不動態膜(パッシブ膜)を形成し、これが鉄の酸化(錆)を防ぐ役割を果たします。
ステンレス鋼は種類が非常に多く、成分・組織・性質はグレードによって大きく異なります。ゴルフクラブで言及されることが多いグレードの例として、析出硬化系の17-4PH(SUS630)はアイアン・ウェッジのフェース材や中空アイアンのボディに使われることがあり、引張強度は熱処理後に1,000MPaを超える場合があります。フェライト系や汎用オーステナイト系(304/316など)は比較的柔らかく耐食性が高い一方、マルテンサイト系(431等)は熱処理によって高硬度化できます。これらを「ステンレス」として一括りにすることはできません。
ゴルフクラブにおけるステンレス鋼の主な用途は、アイアン・ウェッジ・パターのヘッド素材です。17-4PHのように析出強化処理(エイジング)を行うグレードは、時効処理によって高強度化し、フェースのたわみを利用した反発設計に対応できます。一方で「ステンレスは柔らかい」という表現は17-4PHのような高強度グレードには当てはまらず、グレードを明示せずに性質を語ることは正確ではありません。
ステンレス鋼の加工方法としては、ロストワックス鋳造(精密鋳造)が広く使われます。複雑な形状を一体成形できるため、キャビティバックアイアンの量産に適しています。また、特定のグレードは析出強化処理によってさらに強度を高めることができます。
RELATED TERMS ─ 関連用語
不動態膜
金属の表面に自然にできる、目に見えないほど薄い保護膜。
マルテンサイト
鋼を急冷したときに現れる「硬い結晶構造」のこと。
析出強化
結晶の中にナノサイズの「小さな粒」を生やして、金属を強くする技術。
時効処理
金属を比較的低い温度で長時間加熱し、結晶内に小さな粒を生じさせて強度を上げる工程。
鋳造
金属を溶かして型に流し込み、冷やして固める製法。複雑な形状を安定して大量生産できるため、ステンレス製キャビティバックアイアンの主流製法。
ロストワックス鋳造
蝋(ロウ)で原型を作り、その周りを石膏で固めてから蝋を溶かして空洞にし、そこへ金属を流し込む精密鋳造。
硬度
素材の表面の「変形しにくさ・傷つきにくさ」を表す指標。
伸び
素材が引きちぎれるまでに、どれだけ伸びるかの割合(%)。