GLOSSARY / 金属組織・強化
17-4PHステンレス
17-4PH Stainless Steelクロム17%・ニッケル4%・銅4%を含む析出硬化型マルテンサイト系ステンレス鋼。JIS規格ではSUS630相当。時効処理(エイジング)によって高強度化し、アイアン・ウェッジの鋳造ヘッド材に広く使われる。
17-4PHとは、クロム(Cr)約17%・ニッケル(Ni)約4%・銅(Cu)約4%を含む析出硬化型マルテンサイト系ステンレス鋼のことです。JIS規格ではSUS630と呼ばれ、ASTM規格との対応上はほぼ同じ素材を指しますが、厳密には規格化範囲・成分許容幅に差があります。「17-4PH=SUS630」と完全に同義として扱わないよう注意が必要です。
「析出硬化型(PH:Precipitation Hardening)」という特性は、時効処理(エイジング)によって銅(Cu)の微細な析出粒がマルテンサイト組織内に分散し、転位の動きを阻害することで硬度・強度が上がる仕組みです。処理温度と時間によって強度を調整でき、H900(約480℃・低温)では最高強度(引張強度1,310 MPa超)となり、H1150(約620℃・高温)では軟化して延性が増します。「17-4PHは柔らかいステンレス」という表現はH900条件では正確ではありません。
ゴルフクラブにおける17-4PHの主な用途はアイアン・ウェッジのキャビティバックボディ、および中空アイアンのフェース材です。ロストワックス精密鋳造(lost-wax-casting)との相性が良く、複雑なキャビティ形状を一体成形できます。また、時効処理後の強度を活かして薄肉フェース設計にも対応できることが、ディスタンス系・中空アイアンに採用される理由のひとつとされています。ただし素材だけで打球性能が決まるわけではなく、ヘッド形状・設計との組み合わせが重要です。
同じステンレス系のグレードでも、431ステンレス(SUS431)はマルテンサイト系でも組成・強化機構が異なり、17-4PHと同じ性質として扱うことはできません。17-4PHは析出硬化で強度を得るのに対し、431は焼入れ・焼戻しで硬度を調整します。いずれも「ステンレス」の一種ですが、設計上の用途が異なります。
RELATED TERMS ─ 関連用語
ステンレス鋼
鉄にクロムを11%以上添加した合金の総称。クロムが表面に不動態膜を形成することで耐食性を持つ。ゴルフクラブには複数のグレードが使われており、性質は大きく異なる。
マルテンサイト
鋼を急冷したときに現れる「硬い結晶構造」のこと。
析出強化
結晶の中にナノサイズの「小さな粒」を生やして、金属を強くする技術。
時効処理
金属を比較的低い温度で長時間加熱し、結晶内に小さな粒を生じさせて強度を上げる工程。
鋳造
金属を溶かして型に流し込み、冷やして固める製法。複雑な形状を安定して大量生産できるため、ステンレス製キャビティバックアイアンの主流製法。
ロストワックス鋳造
蝋(ロウ)で原型を作り、その周りを石膏で固めてから蝋を溶かして空洞にし、そこへ金属を流し込む精密鋳造。
硬度
素材の表面の「変形しにくさ・傷つきにくさ」を表す指標。
伸び
素材が引きちぎれるまでに、どれだけ伸びるかの割合(%)。